3/3 日が傾き始めたころ、ぽつぽつと帰りだす親子が出始めた。 最後には一応祭りの終わりとして園長の挨拶があるが、各家の事情などでほとんど自由解散のようなものだった。 様々な店を回っていた高耶もやはり疲れていた。元気に飛び回っていた高耶だったが、祭りから帰る親子が立ち始めたあたりでは、直江の腕に抱かれてうつろうつろしていた。 「そろそろ帰りましょうか。眠いでしょう?」 直江に抱かれながら「ん〜……」と眠そうに返事をする高耶は、すでに半分寝ているような状態だった。 帰る途中もずっと高耶は直江の腕の中にいた。起きようとしているのだが、家につく頃には完全に眠ってしまっていた。 「なおえ!!サンタさんは?!」 突然高耶が慌てた様子でキッチンに下りてきた。 幼稚園で祭りを楽しんでいたはずが、気がついたら部屋のベッドに寝ていた事に驚いたらしい。クリスマスが過ぎてたらどうしよう、といった困った顔をした高耶に、直江は近くに来るように手招きした。 「まだ24日ですから心配しないで下さい」 その言葉に高耶はほっとしたらしく、すぐにテーブルの上に並べられている御馳走に目が移っていた。 「すっげー……これぜんぶたべていい?」 「全部は無理でしょうけど、好きなだけいいですよ」 「ぜんぶたべれるもんっ」 そう宣言して高耶は食べ始めた。 「今日は楽しかったですね」 高耶の皿におかずを乗せながら言う直江に、高耶は嬉しそうに頷いた。 「おまつりたのしかった!またやりたいな!」 「そうですね」 「こんどはいつやるかな?」 「近い内にやるといいですね」 「うん!」 寝起きですっきりした所為か、高耶は上機嫌で夕食を食べていた。その後のケーキもぺろりと平らげ、直江の分までしっかりと貰っていた。 そして就寝時間が近づき、高耶はそわそわし始めていた。しきりに「サンタさんはやくこないかな」とウロウロしている。 「高耶さん、寝ないとサンタさんは来ませんよ」 直江は高耶用に読んでいた絵本をしまうと、落ち着かない高耶を宥めるように言った。 「でも、オレねむくないよー」 高耶は言いながら直江の膝の上にちょこんと座った。 祭りの終盤に眠気が襲い、夕飯まで高耶はぐっすり眠っていたせいか、今は完全に目が冴えてしまっていた。 「サンタさんにあえるかも」 ウキウキしながら言う高耶は、サンタクロースに会う気満々だった。 そして高耶とは反対に直江は困りきっていた。万が一夜遅くになりサンタクロースが中々来ないと高耶が悲しむのは見なくない。 「……今日は私と寝ますか?」 最近は一人で寝る事が多くなった高耶にそう切り出した。 「なんで?」 高耶としては純粋にそう思っただけなのだろうが、直江はこの言葉にちょっと傷ついてしまった。 (いや、確かに何故と聞き返されても仕方がないが……) 少し前までは高耶の方から「いっしょにねる」と部屋に来ていたのにな、と高耶の成長を素直に喜べない直江だが、今そんな事でへこんでる場合ではない。 「ダメですか?……私が高耶さんと一緒に寝たいというのは変でしょうか?」 「!!ねる!なおえがいっしょがいいなら、しかたないからねてあげる!!」 仕方がない、と言う高耶だがとても嬉しそうだった。 直江の方から「一緒に寝たい」という言葉が出たのが相当嬉しかったらしい。直江が一緒に寝たいと言うから仕方なく、という風にカッコつけたかったのだろうが、まだまだ5歳の高耶には表情までは隠しきれなかったようだ。 とりあえず高耶を自室にいれ、二人でベッドに横になった。もちろん部屋の電気も消し、これでいつ寝てもいいように準備万端だ。 「……ねれないよ」 直江の横で直江の方を向いてベッドに入っている高耶だが、眠気はまだ無いよ だ。 「もう少し近くにきますか?」 直江がベッドの掛け布団を少し持ち上げると、高耶は直江の胸元にすっぽりと収まるようにすり寄ってきた。 「なおえ……あったかい」 うっとりとする高耶の背中を、直江は高耶が眠り易いように優しく撫で始めた。 「きもちいい……ずっとしてて?」 直江にぴったりとくっつくようにしている高耶はとても気持ちよさそうだ。 「ええ。眠れるまでこうしてますよ」 そんな高耶の様子にぐらりとしながらも、直江は高耶が寝るまで背中を撫でる手を止めなかった。 階段を大きな音を立てながら高耶が駆け下りてきた。 「なおえ!!プレゼントきたよ!!」 「そうですか、よかったですね!」 「うん!!」 嬉しそうにプレゼントの包みを抱える高耶は、直江に見せるようにしてプレゼントを開け始めた。どうやら直江に見せたくて、プレゼントを見つけてもすぐに開けなかったらしい。 「あ、そうだ」 あけたプレゼントを見て更にはしゃぎだした高耶は、ふと思い出したように直江に聞いてきた。 「サンタさん、いつきたの?」 高耶としてはいつもよりも夜遅くまで起きていた昨晩、結局寝てしまったのだが、サンタクロースに会えなかったのが残念だったらしい。 「さあ、私も寝てしまったので分かりませんでした」 「そっか……なおえもあえなかったんだな」 少し残念そうに高耶は言ったが、すぐに玩具の方に興味が移っていった。 今年は無事にバレずに済んでよかった、と直江は胸を撫で下ろしながら、横目で高耶が嬉しそうに遊んでいる様子を眺めていた。 * * * 午前のみの学校が終わり、高耶はさっさと帰り支度をした。 中学校生活最後の冬休み。エスカレーター式でほとんどの者は同じ高校へ進む事が決まっている為、特に受験で忙しいという者はいなかった。さっそくクラスメイト達は遊びの相談をしているようだ。 高耶にも遊びの誘いが来た。終業式後にどこかへ遊びに行こうと言われたが高耶は当たり障り無く断ってしまった。 特にこの後に予定は無い。 だが何故か無性に早く帰りたかった。 いつもの通学路を何も考えずに帰ってきて、そのまま家に入りそうになった高耶だったが、家の前に郵便配達の人がいる事に気がついて足を止めた。 普段ならそのまま確認もせずに家に入るのだが、明らかに郵便物が届いたと分かっているので、面倒くさいと思いながらも高耶は郵便受けを覗いた。 郵便受けの中からいくつか郵便物を取り出した高耶は、一つ一つ確認しながら家の中に入った。 そして、最後の二つで手が止まった。 「……っ!!」 高耶は最後の二つ以外の郵便物をその場に落としてしまったが気にも留めずに、その二つを食い入るように何度も読んだ。 葉書が二枚。 両方とも宛名は高耶宛だ。 「……あのバカ。昔からこんなこと考えてたのかよ」 そこまで呟いた高耶は手紙を持ったまま、学生服のまま直江の部屋へ向かった。 言いたい事が沢山あった。 だがまずは、あの言葉を言わなければ気がすまない。 貰った手紙の一文を真似するようで癪だったが、こんな手紙を貰ったからには、どうしても自分の口から言いたかった。 |
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| この星の次の世紀に何語り継ぐ 約束の遠い明日に届く言の葉 END |
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| [明/gyerek]
はじめましてこんにちは。きっとはじめまして、の方が多いと思います。 作中での説明不足の為に補足しますと、この話はchildシリーズの番外編で、 高耶さんが4歳の時に15歳の直江の家にお世話になるところから始まっています。 この番外編では高耶さんは5歳です。これで手を出したら直江は犯罪者なので、 この話では徹底して我慢大会続行中となっています。 他の方の素晴らしい作品の中に紛れ込めただけでも幸いです。 読んでいただきありがとうございました。 |