えぐりこみたい。この物語の臓腑を、すすれるもんならすすりたい。
自分にしか見えない感情を、日々費やしてきた客たちは、もう滅多なことでは騙されない。
愛憎も歴史も主従も男同士も一時的に心を震わすスパイスにしかならず、
愛しみ悲しみときめく鼓動の高鳴りも、嘘ではないがけして永久の動きではないことも知っている。
苦笑と照れくささの交じった歓声をあげ、過去のグッズや初版の黄ばみに懐かしい視線を向けるあの人たちも、
心の底ではこんなんでなにが分かるとやるせなく嘲笑っているのかもしれない。
ならば人並みに笑い、人並みに怒り、人並みに悩み、人並みに嫉妬する自分が。
この大きな小説の流れに、来館客に、あの世界に。
いったい何を伝えることができるというのだろう――?
2008.2.10 mirage23 ●最初の出会いから3年。仰木高耶22歳――夏。 合コン中にかかってきた一本の電話。そして何事かと駆けつけた直江に何も言わないまま、二人はふたたび動物園に行くことになるが――。(beautiful world) ●太陽が眩しい。海が青い。空がすごい。海水がしょっぱい。すいかがうまい。夕陽は美しく、風は気持ちいい。ぜんぶぜんぶ、ほんとうはあたりまえのこと。 課外授業の帰り。強引に拉致られた直江は、三つ子と存分に夏の海を満喫する。そして夕方、帰りに一人の老人を見た四人は、今日が何の日だったか気づく。(おぼれてもいい) ●ミラージュ記念館特別展覧会。 やるのは12月24日。場所は特別展示室。テーマも秘密。展示内容も秘密。というか自分は立ち入り禁止。くそったれふざけんな。 直江に苛立ち、キュレーターとしての自分の力不足に焦る高耶のまえに、さらに前館長・景虎の名前が浮上してきて――?(クリスマスのまえのばん) |
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